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9月3日 「エスケープ」カトリーネ・ヴィンフェルド監督とモーテン・カウフマンプロデューサーのゲストトーク

2009/09/04

 「エスケープ」は、難民問題を真正面から捉え、メディアの役割を問い直すカトリーネ・ヴィンヘルド監督の初長編作品。上映前に舞台あいさつでは、監督は、「私たちが人間としてお互いにどのように助け合うことができるのか。富めるものも、そうでないものも、どのようにしたら助け合うことができるのかということをこの映画を見て感じてもらえれば。」と期待を語りました。上映後のゲストトークでは、監督から作品制作のきっかけや、 モーテン・カウフマンからプロデューサーを引き受けたいきさつなどが語られました。

Q この映画を撮ろうと思ったきっかけは何だったでしょうか?
カトリーネ・ヴィンヘルド監督 『難民』という小説を読んだことがきっかけです。デンマークでは、難民を国内で受け入れるというよりは、国外へ追い出そうとする風潮がありますが、この小説を読んで、そうしたデンマーク社会を反映しているとても重要な話だと思いました。またジャーナリズムの話でもあり、女性ジャーナリストがとても重要な役割を果たしていました。

Q カトリーネ・ヴィンヘルド監督の初監督作品をプロデュースするにいたったいきさつは何だったのでしょうか?
モーテン・カウフマンさん 何よりも大事なのは馬が合ったということです。彼女とは別の仕事を以前一緒にしていて、息があったので、彼女が長編をとるときには僕がプロデュースすると約束していた。また、彼女は素晴らしいテレビシリーズを作っていたし、彼女が良い長編映画を撮ることは明らかだったので、私の決断は容易なものでした。

Q この映画を作るにあたって一番難しかったことは何ですか?
カトリーネ・ヴィンヘルド監督 私はアフガニスタンに行ったことはないので、行ったことのない国についての映画を作るということが一番難しかったし、知らないままに映画を撮るということが自分の感情からしても素直に許せるものではありませんでした。しかし、戦地に赴くということは実際不可能なことであり、アフガンの映画を見たり、GOOGLEでアフガンについて調べたりして、補いました。
モーテン・カウフマンさん 私が、彼女がアフガンに行く事を許さなかったので、非難の矛先は私にあるべきですが、私のアイデアでトルコの僻地をロケ地に選ぶことができ、アフガン人でもアフガンだと錯覚してしまうような映像が撮れました。

Q ナジール役の青年はアマチュアだと伺ったのですが…?
カトリーネ・ヴィンヘルド監督 主人公のリケを演じるイーバン・ヤイレは大女優であり、このリケにひけをとらない子が見つかるかどうかという不安はありました。オーディションで人を集め、撮影前には3ヶ月の訓練を行いました。ナジール演じるファイグ・サマニ自身、カブールで生まれ、5歳のときにイランの難民キャンプで過ごし、12歳のときにデンマークにやってきたという生い立ちを持っています。映画のストーリーが彼自身のストーリーと重なる部分が多くありました。撮影当初は、自信なさげだった彼も、この撮影が自分にとって大切な機会だという事を理解し、努力していたために、撮影後には一人前の大人になっていきました。

Q デンマークはNATO軍としてアフガンに兵を派遣していますが、そのことがデンマーク社会にどのような影響を及ぼしていますか?
カトリーネ・ヴィンヘルド監督 デンマーク人にとってもアフガン問題は、理解するのが難しいものです。アフガンでの戦争は、宗教対立による戦争ですが、デンマークではそれほど強い宗教観はないため、理解しにくいものです。またアフガンへの兵派遣も、政治的判断によるものであり、私たちには兵を派遣する意義も理解できていません。

Q 基にされた本のタイトルは「refugee」ですが、これを「escape」と変えたのはどうしてですか?
カトリーネ・ヴィンヘルド監督 二つ理由があります。一つ目は、主人公がリケという女性ジャーナリストであり、難民ではないということ。二つ目は、デンマーク人は難民問題に関わりたがらないのですが、しかしこの映画は大勢の観客の方に見てもらいたいものだからです。

(是澤)