接吻泥棒

  • ドラマ
  • 9月5日(土)13:20 大会議室(Lコード:40732)/斉藤綾子セレクション 17:40
  • 日本/1960/83分
  • 監督:川島雄三
  • 出演:宝田明、団令子
  • 配給:東宝
銀座の真中で起こった衝突事故。タクシー乗客のライト級チャンピオンの高田明は、乗用車で気絶した女子高生、美恵子に口移しで水を飲ませているところをトップ屋にスクープされ、スキャンダルが巻き起こる。プレイボーイの明、年上の彼女たち、負けず嫌いの美恵子が繰り広げるドタバタ恋騒動。宝田明、団令子、新珠三千代、草笛光子が競演、モダンなテンポが光る洒脱な恋愛喜劇(スクリューボール・コメディ)。石原慎太郎のカメオ出演も必見。

斉藤綾子セレクション

今回選んだのは時代設定も趣向もテーマも全く異なるレアな2作品。成瀬監督の『あらくれ』(1957)は徳田秋声の自然主義文学の文芸映画。一方、川島監督の『接吻泥棒』(1960)は石原慎太郎原作の風俗小説。共通するのは何か。たくましい女たちだ。女たちの驚くべきエネルギーを見事に捉えた洒脱なセンスを堪能していただきたい。

「ああ、たくましき女たちよ、そしてダメ男たちよ」

日本映画には珍しい、勝ち気でたくましい女たちが登場する非常に魅力的な作品がある。『あらくれ』は、一人の女と三人の男をめぐる人間模様が描かれる。一方、洒脱な風俗映画で知られる川島監督作品の中でもほぼ上映される機会の少ない『接吻泥棒』は、一人の男と三人の女が恋騒動を繰り広げるスクリューボール・コメディの怪作。両作とも圧巻は痛快なキャットファイト。女たちのまぶしいほどのたくましさとダメ男たちのジェンダーの闘いに注目してみたい。

斉藤綾子

明治学院大学教授・当映画祭コーディネーター

32 33 saito ayako

東京都出身。上智大学卒業後、米国UCLA映画テレビジョン学部評論学科博士課程修了。明治学院大学文学部芸術学科教授・映画評論家。専門は映画理論、特に精神分析理論、フェミニズム理論、ハリウッド映画論、女性映画論など。