あらくれ

  • ドラマ
  • 9月5日(土)15:30 大会議室(Lコード:40733)/斉藤綾子セレクション 17:40
  • 日本/1957/121分
  • 監督:成瀬巳喜男
  • 出演:高峰秀子、上原謙
  • 配給:東宝
幼くして母に疎まれたお島は東京近郊の農家の養女として育てられたが、養家の勧める結婚話を嫌って家を出てしまう。神田にある缶詰屋の若主人と結婚するが、女出入の激しい夫と大喧嘩の末に離婚。東北の山村にある旅館の女中となるが、そこの若旦那と関係を持ってしまい、結局東京に戻る。洋服店で知り合った職人と再婚するが、それも長続きせず…。勝気ながらも情に絆(ほだ)されやすいヒロインを高峰秀子が好演。大正時代を甦らせた成瀬の演出も見所。

斉藤綾子セレクション

今回選んだのは時代設定も趣向もテーマも全く異なるレアな2作品。成瀬監督の『あらくれ』(1957)は徳田秋声の自然主義文学の文芸映画。一方、川島監督の『接吻泥棒』(1960)は石原慎太郎原作の風俗小説。共通するのは何か。たくましい女たちだ。女たちの驚くべきエネルギーを見事に捉えた洒脱なセンスを堪能していただきたい。

「ああ、たくましき女たちよ、そしてダメ男たちよ」

日本映画には珍しい、勝ち気でたくましい女たちが登場する非常に魅力的な作品がある。『あらくれ』は、一人の女と三人の男をめぐる人間模様が描かれる。一方、洒脱な風俗映画で知られる川島監督作品の中でもほぼ上映される機会の少ない『接吻泥棒』は、一人の男と三人の女が恋騒動を繰り広げるスクリューボール・コメディの怪作。両作とも圧巻は痛快なキャットファイト。女たちのまぶしいほどのたくましさとダメ男たちのジェンダーの闘いに注目してみたい。

斉藤綾子

明治学院大学教授・当映画祭コーディネーター

32 33 saito ayako

東京都出身。上智大学卒業後、米国UCLA映画テレビジョン学部評論学科博士課程修了。明治学院大学文学部芸術学科教授・映画評論家。専門は映画理論、特に精神分析理論、フェミニズム理論、ハリウッド映画論、女性映画論など。